寺報 清風






          真夏の衣服


 雨が少ないまま梅雨明けし、今年も猛暑を迎えようとしている。数年前、夏のカンボジアへ旅行した際、日中の暑さに比べて夕方の風の涼しさに驚いた。数十年前までは、日本でも「夕涼み」という言葉があり、人々は縁側でうちわを片手に夏を過ごした。私が子供の頃にもまだ、蚊帳の寝床に入ると、お腹が冷えるといけないからと身体にはタオルケットを掛けられた記憶がある。現在ではアスファルトで地表が舗装され、コンクリートのビルが林立し、樹木や田んぼも少なくなった平野部は、四六時中温度が下がらず、クーラーの室外機からの熱風も地球温暖化を促進するばかりである。寺の本堂は涼しいと言われたのも過去の話で、多くの住職がエアコン導入を切望する時代だ。

  ある法事の場で、読経が始まる直前に親族が議論を始めていた。ある方が「27度が良い」と言い、隣の人は「いや、それは暑過ぎるから25度にすべきだ」と。私達の多くは夏なのに、最も快適な温度で過ごすことに慣れてしまった。新しい車では、運転席と助手席とで違う温度が設定でき、しかも0.5度まで調節できるようだ。便利というか我儘というか、人間の欲望を満たす文明の利器は留まるところを知らない。先日、桑名別院で観たノンフィクション映画『小さき声のカノン』(鎌仲ひとみ監督作品)では、原発事故後に福島県の子供たちが放射能に晒され続け、そこに暮らす母親達の苦悩する姿を垣間見た。自分だけの都合や快適さを求めることの罪悪を、まざまざと感じさせられた。

 僧侶の衣には夏用、冬用、秋春用があり、季節に合った衣体がある。夏用は襦袢、白衣、黒い間衣、足袋、そして袈裟まで薄い生地で仕立てられている。しかし昨今の猛暑では夏用でも暑く汗まみれ、袖を切ってクールビズにしたいくらいだ。まだ僧侶に成りたての頃、汗をかきながら声を出し読経をする間中、自分も暑いはずなのに、うちわを私に扇ぎ続けてくれたばあちゃんがいたことを思い出すと、己の愚痴が恥ずかしい。昨今では少なくなったが、上半身裸で股引一枚の姿で一緒に正信偈をお勤めする男性の姿はいつも尊い。お勤めをするのに着飾らない、勤行が日常にあることの迫力がある。がさつさの中に、単に平和や健康を良しとする考えを超えた、業縁の深さに触れた人の生活を教えられる。

 汝、起ちて衣服を整え合掌恭敬して、無量寿仏を礼したてまつるべし。 釈尊『仏説無量寿経巻下』

 この言葉は、お釈迦さまが教えを語り終える直前、懸命に聴聞していた弟子の阿難の姿勢に、改めて更に注意を促した言葉である。生きることの尊さを忘れ、生かされていることのご縁を忘れ、己の善も悪も当たり前とし、「人生こんなもんや」と虚しく過ごしていないか。誰しもいい加減に生きているのでない、けれども大切なことを見失っていないか。思い通りにならなかった人生を満足して死んでいけるか、と私が問われている。人が本当に求めるものは、私が今ここに在ることの根拠、つまり迷い悩むままの私の存在が、また思い通りにならない自分以外の存在が変わらないまま尊いのだと、そう響き合うような願いではないだろうか。今年もお盆を迎えるにあたり、改めて僧衣の襟を正し共に「南無阿弥陀仏」と手を合わせていきたい。

[文章 若院]

 子供達に「ごめんなさい」と謝ってから歩んでいきたい 佐々木道範

 心配しているつもりが、むしろこちらの方が安心したい 高柳正裕



≪収骨と納骨の違い≫

 この度、完成した新本堂には中央の本尊・阿弥陀如来の安置される須弥壇の下に収骨場所が設置されました。故人を火葬しお骨を拾った後、大きい骨壺のお骨はお墓に収めます。小さい骨壺(六角形の箱=歯骨箱)は、お内仏(仏壇)にしばらく安置し、本山・東本願寺へ持っていく習慣が受け継がれてきました。近年、京都まで赴くご縁が少なくなってきたことから、称念寺にてお骨を預けることができるようになります。これが今回、受付のご案内をさせていただく「収骨」です。

 よく質問がある「納骨」は、お墓の代わりとなる納骨堂へお骨を預けることです。新本堂には地下室を設け、収骨場所とは別に地下納骨堂ができました。ロッカー形式の納骨壇が現在、松本仏具にて製作されています。後継者の有無や個々の事情で、一家のお墓を持たない方に対し、お墓の代わりに寺にお骨を納めることが納骨です。納骨壇が完成次第、本年秋の寺報にて詳細のご案内をさせていただく予定です。

※ 称念寺の墓地・一向浄苑には、個別のお墓を持たない方に対し、浄苑の中央正面にどなたでもお骨を納められる場所(共同墓地)もございます。


≪収骨受付・第一回ご案内≫

 今回、寺報に同封させていただいた「収骨申込書」は、収骨の受付にて提出いただく書面です。盆経会の行われる8月10日(木)午前6時~11時まで、本堂に向かって右手の玄関の間にて受付場所が設置されます。確認事項を良くお読みいただき、記入済みの書面を志納金と共に提出してください。

 複数体をお持ちの方は、申込書をコピーしてご使用いただいても結構です。受付場所にも申込書は置いてあります。


≪一向浄苑の申し経≫

 称念寺の墓地(一向浄苑・知立市東栄)では、8月13日(日)、14日(月)に例年の「万灯会」を勤めます。両日共に午後6時より8時まで申し経を受付いたします。最も混雑するのが13日の午後6時前後です。両日の「朝の申し経」(午前7時~9時)も合わせてご案内いたします。


≪前住職祥月法要のご案内≫

 前住職・伊勢研学(昭和48年還浄)の祥月法要は7月27日(木)午後3時より。法話講師は市野智行師、名古屋市の道誠寺の若院さんで、同朋大学の講師としても活躍されている若手僧侶です。どなたもご参詣いただけます。


≪お盆の荘厳≫

 真鍮の仏具を、おみがきしましょう。お内仏の清掃をして、夏用の「打敷」を掛けます。仏華はシンプルに、芯は「槇」の木を、花類の代わりに「ほおづき」を添えます。また、お盆には提灯を仏間に掛けます。岐阜提灯などを見かけます。少し高価ですが「切子灯籠」が、大谷派の正式なものであります。一つなら中央に、一対を用意するなら左右に分けて吊り下げます。


≪平和希求の梵鐘≫

 鐘の音声は古来、聴く人に様々な感慨を呼び起こしてきた。『平家物語』の冒頭には、祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、とある。聴く人、撞く人の願いや祈りが込められる。
  8月6日 8時15分(係)  広島原爆投下
  8月9日 11時2分(係)  長崎原爆投下
  8月15日 正午(参加者募集) 終戦記念日
 平和の梵鐘は、宗派を超えてお寺が「平和を願い、終戦記念日にお寺の鐘を撞こう」という行事です。撞くことを希望される人、12時に集合してください。


≪本堂造営決算書≫

●当初の予算(ご寄付の依頼書より)
 全体計画の総予算は、3億8千万円。募財(寄付金額)は、3億円。一戸あたり50万円をご依頼しました。平成23年11月からのことでした。

●収入の部
碧海信用金庫 283,942,762  寄付金(ご門徒)
郵貯① 17,222,412  寄付金(ご門徒)
郵貯② 6,361,390  寄付金(ご門徒)
小計 307,526,564
祝儀 2,723,000  3月25、26日の落慶及び御遠忌法要の祝儀
稚児 3,776,000  参加費8000円・472名分
ローソク料・賽銭 166,043  起工式、上棟式の祝儀
事前の用材費 88,053,290  欅52本、チーク100本、三明松、黒檀、紫檀、桑
事前の木材保管・倉庫 8,400,000  欅52本、チーク100本、三明松、黒檀、紫檀、桑
 総計 410,644,897
●支出の部
本体工事 267,258,213  本堂、玄関、地下納骨堂
設計管理費 8,754,100  アスカ設計、田中社寺設計
運送・置き場 1,201,200  弥富市・とみた商運
裁判・弁護費 2,558,156  岐阜市・足立法律事務所
仏具・荘厳費 18,167,220  八光堂、松本仏壇
法要費 4,710,000  声明方、式支配、来賓、法中、楽人の法礼
稚児 2,757,268  ※内訳 1,611,828  貸衣装・縫源法衣店
773,380  クラウンパレス・ホール借用
157,680  特設ステージ
92,340  チラシ印刷・クシロ印刷
122,040  仏教本
保険費 2,196,600  AIU火災保険・10年分
記念品代 4,059,696  ※内訳 2,210,220  八光堂・念珠・旅本尊
1,009,348  タオル、ボールペン
573,128  花びら、栞、ファイル
267,000  花台・郡上フクモク
お供え、和菓子 238,136  呈茶、みやげ用
整備費 755,746  小野田造園、玉泉堂、下川石材
事前の用材費 88,053,290  欅、チーク、三明松、支輪、欄間、束飾り、その他
事前の木材保管・倉庫 8,400,000  蒲郡市・御津建
 総計 409,109,625  残金:1,535,272

  決算書の作成:大村雅人(名古屋市・税理士)
            石川稔(総代・会計担当)

●補足
 事前の用材費、木材保管・倉庫代は、住職が5000万円を拠出し、残りは寺会計より支出しました。平成11年より購入を始め、チーク材は以後高騰して、現在では高嶺の花の銘木になってしまった。アフリカ欅は現時点で、全く入手できない貴重な木材となりました。また彫刻を施した多くの装飾類、多量の石材などについても、安価な時期に発注して良かったと改めて思うことです。
 総収入に、事前の用材費、木材保管・倉庫代を加算して決算書を見てください。途中で建設会社の倒産という痛い目に遭う出来事に慄きましたが、現場監督さん、棟梁、宮大工諸氏、設計士などの献身的な助力を賜って完工まで辿り着きました。

 記念品の品々は、①寄付されたご門徒、②法要を勤めていただいた法中・楽人・来賓、③稚児の参加者、④協賛いただいた墓檀家・ご信徒さんにもお配りしています。記念品という項目でまとめて計上してあります。
 支出項目には①建設委員会の会議費、②出張・交通費、③接待費、④通信費などは掲載しませんでした。これらの支出については、寺会計の方で処理させていただきました。

 当初の計画概要がほぼ達成できました。現在、本堂の内陣下に「納骨堂」のロッカー設置にあたっています。7月末日に半分が納められ、8月中旬には全てが完了となる運び。

 本堂の椅子について:100席分の椅子席が用意できました。本堂事業とは別にご協賛をお願いしました。協賛金の残金にて、焼香台、供物台を新調し、賽銭箱(本堂内と会館の2個)の改修に充当しました。







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発行所
真宗大谷派 称念寺
発行人 住職 伊勢徳