寺報 清風








          ふりかえって  アスカ設計 古橋武生


 伊勢徳住職との出会いは、ある社寺建築業者の推薦で、仕口、継手等詳細を設計図に書く事務所は少なく、社寺専門店ということで15年前の平成13年7月に称念寺様に伺い面談しました。

 この時点でケヤキ、三明松(中国産)、ブビンカ(アフリカ産)は購入済みで弥富市のカジウラに保管され、本堂の建築の思いは第一に「丈夫で長持ち」することで、ご自身で『コンクリートがあぶない』、『釘があぶない』、『お寺を地震から守る方法』、『よいお寺を建てるには』、『地震と建築防災工学』、『宮大工千年の知恵』、『現代棟梁の設計術』、『古建築の細部文様』等の専門書を読破、社寺建築の専門用語は殆ど理解されていて、基礎工事、木工事、屋根工事等の現代木造工法に懐疑的と思いました。

 工事中寺院及び新築完成寺院を遠距離に関わらず30棟くらい見学され、社寺専門店も殆ど訪問し社寺建築に精通しており、当社20棟以上の本堂の設計経験のなかでも一番難しい本堂と予感しました。以来、数種類の本堂設計図、概略工事費作成、石材デザイン作成、工事中寺院見学等を経て、設計事務所4社の設計コンペとなり、選定され平成24年6月15日に設計監理契約を締結しました。

 本設計にあたり配慮したところは、「丈夫で長持ち」させる基礎は200年型超耐久コンクリート仕様で、コンクリートには奈良朱雀門で実績のあるシュリンクガードを添加し、鉄筋はエポキシ樹脂コーティングを使用、これは住職の指示でした。基礎杭はマサツ杭300Φ92本打ち込みました。床について外陣床は地盤面より+500で参道よりバリヤーフリーとしており、床が低い分地中梁の成を高くし、床下点検しやすくしてあります。

 軸組みについて、樹種は支給品の①ケヤキ、②チーク、③三明松、④ブビンカ等の原木で、不足分はピーラで、土台はヒノキで柱巾と同じ幅です。継手、仕口はすべて伝統在来工法でHD金物、ANB、釘は全てSUS304を使用しています。壁について、本建て部は杉板30tによる落し込み板壁+荒壁パネル、外部周りは荒壁パネル+筋違でバランスよく配置して、壁量は十分余裕があります。

 小屋組みは1本の長さが14mの長尺もの6本を使用し、継手を少なくしています。屋根はご住職指示のシコロ葺き屋根でSUSステン本葺きで、社寺建築では初めての試みです。丸環棟、カンタカの採用も初めてです。以上により震度7でも倒壊しないと確信しております。

 平成23年11月に設計完了して、社寺建築専門の建設会社7社に見積もり依頼し、一番予算に合う丸平建設に決定され、平成24年2月に工事請負契約をかわしました。支給材ケヤキ52本、チーク100本の木取り、製材は平成24年8月より平成25年2月まで、24回にわたり丸平建設で行い、割れ、節の少ないものを選びました。

 本堂工事に一番重要な大工棟梁は、入札の際に提出された森等棟梁について、資格、経験、経歴を審査し、平成26年1月に森等棟梁の施工した永福寺、宝樹寺、眞宗寺を見学、いずれも材料、仕口等上手にできており称念寺を担当する技術は持っていると思いました。このとき現場代理人に辻幸司と記述があり同じく資格、経験を調べ問題はなく普通の監督さんでしたが、直営工事になってからの対応と手腕の凄さには感服させられました。

 原寸検査後平成26年1月より木材、加工開始、現場にて土台敷、建て方を開始して立柱式が、平成26年12月には上棟式が盛大に行われました。平成27年1月19日丸平建設が倒産して工事は止まり加工場、材料置き場に入ることができなくなりました。以後弁護士との打合せ、管財人の立会、材料の確認、支給材の返還、加工済み材の購入及び運搬、残工事を施工する建設業者の選定等を経て、平成27年7月に直営工事にて残工事を行うことに決定し、森等棟梁も快諾してくれ、9月より現場にて木工事が始まり再出発しました。

 森棟梁、辻幸司監督は共に再出発には欠かせない人たちで、棟梁はやり掛けた仕事を中途半端にしたくない気持ちがあり、難しい加工も一生懸命やってくれました。仕事は早く綺麗で回転も良く、性格は明るく、シャイで頑固と感じました。辻監督は直営工事の実行予算算出、毎月の各業者出来高、支払額の承認、原価計算報告書施工図の作成、工事工程の管理及び自ら職人となり多様な仕事を行い、支出を抑えてくれました。性格は真面目て著しく几帳面でスポーツマンです。

 たくさん困難なことがありましたが良い人たち、良い材料に恵まれ、あと少しで竣工を迎えることができます。称念寺御本堂は200年以上持たせなければなりません。それを常に考え設計及び監理をしてきました。熟考を重ねて10年超、アスカ設計が担当したうちの最高の本堂になりました。

 竣工しても、それで終わりではありません。床鳴り、建具建て付け、柱ひび割れ、電気設備関係の不都合が少しながら出てきます。1年検査も行うつもりです。ご住職、若院様、建設委員会の皆様には大変お世話になりました。今後ともよろしくお願いいたします。



«本堂造営の進捗状況≫

 大工諸氏による木工事は99%終えて、あと1週間で一旦終了。後日に数日、点検作業と追加作業を残すのみとなりました。左官工事が屋内外で行われています。建物内部は「じゅらく壁」、「しっくい壁」に仕上げますが、下地から4層に分けて塗られています。感想を待っての作業は時間を要するようです。施工は三好町のキド業務店。

 本堂向拝(正面出入り口)はスロープの形状。中央の通路には階段がないのが特徴、コンクリートが型枠内に流し込まれました。この上に石を並べていく作業が始まりました。石工事は本堂のロビー、玄関の入り口、玄関への通路、本堂外周部の犬走りなどです。施工は岡崎市の下川石材。

 本堂内陣の壁面には「蓮の絵画図」約7間分に貼る打合せが行われました。施工は山屋敷町の玉泉堂さん。降雨時の排水、天水桶の配管、流しからの排水などは、ご門徒の牛田町タブチ住設さんが施工。本堂内陣と裏部屋などの畳が発注されました。山町の神谷畳製作所が受注されました。

 10月から本堂仏具関連の工事が開始されます。八尾市の松本仏壇製作所が担当します。地下には納骨室があって「ロッカー形式の納骨壇」が並べられます。形状、色合い、デザインなどが決まっていきます。中央には法蔵菩薩の五劫思惟像が安置されます。

 御本尊阿弥陀如来の下部を須弥壇といいます。この須弥壇の中に裏側から収骨していただく小さな棚が設置されます。通常、葬儀をされますと終了時に2箱の遺骨を持ち帰ります。四角い箱の大きい「遺骨」は忌明け法要を終え、暫くしてから墓に納めます。もう一つ小さい6角形の「歯骨箱」があります。この遺骨は本山=東本願寺に。または京都の大谷祖廟に納めます。私たち真宗門徒は死後、宗祖親鸞聖人のお休みになっている地に、一緒にということで京都の御本山に収骨する。また東山の大谷祖廟に持参することが奨励されています。

 この小さいお骨箱を、新本堂の須弥壇下に「収骨」をしてください。お預かりしたお骨の一部は、お寺から本山にお届けします。残り一部は新本堂の須弥壇の下に収骨します。この収骨室の仏間も設置されていきます。受付は明年4月1日から。中央には宗祖親鸞聖人の座像が安置されます。内陣の祖師前には、従来絵像を掲げてきました。新本堂完工後は、桑の木に彫った御開山聖人の板像を安置いたします。

 それらに加えて、従来の瓔珞、卓、輪灯、具足、宮殿などが「洗いの作業」などを終えて、新本堂内に設置させられていきます。これらは3月下旬の落慶法要まで順次に進められていきます。


 秋彼岸 近づく経を よみ習う   中川宋淵

 十日過ぎ 二百二十日の 萩の花   横山蜃楼




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発行所
真宗大谷派 称念寺
発行人 住職 伊勢徳