寺報 清風











 この語は、プログラムといった意味の仏教語です。儀式を執行するにあたって、このような内容で進行しますといった説明であります。この寺報の4頁には報恩講の「差定」が載っています。これが解ることで『報恩講』がより身近なものになります。

 「御伝鈔」(聖典724頁)は、宗祖の一代記です。2冊に編集されています。そこには、ご誕生からご入滅までの90年の生涯のドラマが綴られています。期間中、内陣の南余間に4幅が掛けられます。右の上からスタートして、一番左の軸の上部がゴールとなっています。この説明文が初日と二日目の晨朝後、上下に分けて読み上げられます。

 結願の晨朝の後には「御俗鈔」(851)です。これは蓮如上人の書かれた御文の中から、宗祖聖人の遺徳を偲ばれた手紙を、別格に抜き出したもの。第4帖目より抜きだいて、別格扱いにした重々しい“お文”です。しみじみと味わいたい名調子の文章です。

 午前8時および10時に勤行が勤まりますが、両者は全く格調が違います。8時からは「三淘」であり、毎日の「おあさじ」と同等の発声ですが、10時からは「五淘」です、数の違いはたった二つですが、力の入れ具合が強いのです。音律が高く、「篳篥」「竜笛」の音で補っていただきます。淘の譜が二本加わることだけれども、そこでは丁寧さと力強さが要求されています。

 2・3日目の第2日中は、「八淘」まで調子を上げた「伽陀=稽首天人」から始まります。そして山主が中尊前に進み、高座に上がる「登壇」です。香を焚き上げ礼賛します。ここで「式文」(738)の1段分が静かに、穏やかに読まれます。式文は3段で構成されていますので、この中の2段分が順次、年を追って繰り返されて使われます。作者は、宗祖の孫にあたる覚如上人、“報恩講”の執行と聞法こそが、門徒の一大事であると、加えて宗祖・親鸞への追慕の情が製作意図でありました。格調高い美辞麗句の名文のきわまりが、そこに伺えます。読み終えて、席に戻る仕種を「下高座」といいます。その後にまた「伽陀=直入弥陀」を1章。

 そこからは声明方ともども「おつとめ=正信偈」が始まります。続く念仏は「五淘」の節で声を揃えて出します。初重から二重・三重に移行していくことの様子は、序(おだやかに)・破(荒々しく)・急(重々しく)のごとく転調し、エンディングに辿り着きます。三重および「回向」は非常に高い調子ですから、雅楽の付物之有となります。

 報恩講のみで使用する勤行本は、堂内の経机に積み上げ備えてあります。ご利用ください。また記事のなかの各聖教は、本山の出版部から出ています『真宗聖典』をお求めいただきますと全て網羅されています。真宗を深く学ぶための、代表的な書籍です。出版部はhttp://books.higashihonganji.jp


 助かるということは
  問題がなくなることではない
 自ら 課題をいただくことを
  助かるという


<本山(東本願寺)御影堂>

 現在修復中の御影堂に懇志をお願いしてきましたところ、分割でしたが1万円を各戸からご協力いただきました。よって新調される屋根瓦に、ご芳名または法名を記名することができます。お届けした用紙に書き込んで、お寺までお届けください。寺よりまとめて本山に郵送します。締め切りは12月15日まで。報恩講など寺に参詣される折に持参ください。

注:2007年以降の申請は、阿弥陀堂の瓦に記名されることとなります。

<三河別院・ご遠忌 お稚児さん募集>

 明年の4月20・21・22日、別院で「ご遠忌」が厳修されます。22日には稚児の参道列が予定されています。定員に限りがありますので、参加希望者は寺まで。稚児行列の参加冥加金は、一人6千円。同日法要の中で「帰敬式」が受けられます。この希望者も募集しています。受式冥加金は2万円です。またこの法要執行にあたり、皆様方にご懇志が依頼されました。明年の「お集め」で、ご志納下さるようお願い申し上げます。ご遠忌・別院懇志の詳細は、明年3月の寺報でお知らせ・お願い申し上げます。

<称念寺の本堂>

 江戸中期、知立の大火で焼消した寺は、中町から約250年前に現在の地に移動。本堂は長年の風雪に耐えてまいりました。その後、私の知るところでも三河地震・伊勢湾台風などで大被害を被りました。その都度檀家の皆様のご寄付で修復されてきましたが、築200年を経た本堂。現況は、軒の隅木はつっかい棒で支え、各所が鉄骨・アングルで補強されています。重要な桁の折れ・柱の腐食も見受けられます。そこで社寺建築会社・5社に建物診断していただいたところ、異口同音に改修より“新築を”と奨められました。さらに耐震・バリアフリー・椅子席対応・冷暖房など、現代という時代をも視野に入れるならば、ここで思い切って“新本堂”をと提言されてきました。

 頻繁に総代会を開催し、このことに討議してまいりました。結論として修復でなく新築する、そのために“本堂用材”の確保にあたることとしました。まず数年がかりで木材を購入し、調達し終えたら設計に入る、そして実図面を描いていこうとする構想になりました。主は木造とし、柱・梁はケヤキで約50本の原木、桁・貫・根太などの構造体はチーク材で約百本の丸太、そして破風・縁・垂木などの資材を吟味して進行し始めました。

 本堂の新築は、寺の歴史においても数百年に一度のこと。中町時代の称念寺450年、新地に移動してから250年、計700年の歴史の経過の中で、本堂建築は今回が推定4回目であろうと思われます。多くの社寺建築関係者の説明を受けながら住職と総代会メンバーは、ことの大きさに恐れをなしながら、時に疑問な点を聞いたり、相談にのっていただいたり、各所に出向きながら現場の宮大工さんからアドバイスもいただいています。そこから見えてきた新・本堂は、ともかく“丈夫で長持ち”というものが基本課題となってきております。近い将来には、皆様方の多大なご支援を仰がねばなりません。伏してお願い申し上げます。

 われら一向に念仏して
  青草びととなりて 親鸞に学ばん






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2006年11月号

差定(さじょう)
発行所
真宗大谷派 称念寺
発行人 住職 伊勢徳