寺報 清風












 市内・東栄の墓地(一向浄苑)の垣根や空き地に、数年かけて仏花用としての各種の木々を植樹し、増やし続けてきた。10年ほど前から、仏花の「芯材」の入手が思うに任せなくなったからである。以前は近郊の中田(豊田市)、東境(刈谷市)に出かけ、ちょっとした山に入れば簡単に確保することができた。あたりは開発が続き、近頃全く用意することができなくなった。

 近年、植樹した木々も成長してきた。ようやく伐って芯に、枝ぶりに使用できるようになった。報恩講の前、花立ての材料の仕込みから準備がスタートする。

 主は松、添えにヒバ・柳など、高さは1〜1.5m、6組を造る。その分必要な量を伐ってきて搬入する。講員が2日間で枝ぶりを決め、組み合わせ仏華に仕立てる。いかに表現したら力強い樹形になるかが競われる。各人各様。出来上がったら、準備した材料の半分ほどは、残り捨てることとなる。

 仏具がバラバラに解体され並べられる。油の受け皿には、垂れた油が固まっている。灯心の燃やし口などは、灯明油の燃えカスが、こびり付いている。これらの汚れを丁寧に取り除いてから「磨き」にはいる。真鍮の花瓶(カヒン)の深彫部分には、使用済みの歯ブラシを使用して磨き剤を溝に押し込み擦っていく。菊をモチーフにした燭台である「菊灯(キクトウ)」の溝、鶴・亀の姿を表した「ローソク立」なども、ブラシを使用して磨くことによってようやく、細かな細工模様の隅々までを綺麗に磨き仕上げることができます。

 丁寧に作業をすればするほど、美しく、新たな輝きをもたらし、新品同様の仏具として蘇ってくるのです。手抜きがあれば如実に見てとれます。油断はできません。時の経過からのくすみ、汚れを洗い落とす作業でもあります。当に私たちの生活模様にも似ているかのようです。各パーツを組み合わせ元の仏具として形に戻す。2段構成の10組の灯明皿の復元、あたかも知恵の輪、パズルをやっているようでもある。

 お磨きをする仏具に、報恩講に使用される特別の仏飯器も加えられる。平素の仏飯はおあさじ後、各尊前に供えられる。本堂での数は計6個(一般家庭では3個)。6器分が、約1合炊かれたご飯で賄える。しかし報恩講には大型のものが、場所は南余間に。4幅の軸の前である。飯器一つに約6合のご飯の特盛が上がる。

 お勤めする折の鈴の台は梨地仕上げの「鈴台(リンダイ)」、和讃の本を置く机である「巡讃卓(ジュンサンジョク)」「聖人卓」、お供えを乗せる「供荷(クゲ)」などの什物(道具・備品)は、平素使っているもの、ほぼ全てを片付けて、入れ替える。講期間中のみに出番とする高価な什物(調度品)が並べられ設置されていく(講が終わったら、直ちに仕舞われてしまう)。

 3ヶ所(中尊、上卓、祖師前)に掛ける「打敷(ウチシキ)」も特製、使用する「ローソク」の大きさや「お香」の発する匂いにいたるまで、ともかく報恩講においては、全てが別格扱いとなる。

 これぞ報恩講というお荘厳が@ご絵伝です。4幅の軸で構成されています。これが2間の南(左側)余間に掛けられます。

 関連してAご伝鈔。これは親鸞聖人の生涯、出来事を綴った本、上下2巻の各段に@が挿入されている、覚如上人が述す。

 更にBご俗姓。これまた、同様に宗祖を讃えた文、8代上人=蓮如上人が書かれたもの。A、Bは、おあさじ後に拝読いたします。

 内陣の正面中央には座具が置かれる。雛壇をセットしたような形の高座が現れる。C歎徳文、存覚上人述D式文、覚如さんの筆による、が座具の上において発声を抑えつつ、重々しく読み上げられます。2・3日目の法要の差定(サジョウ、プログラムのこと)です。

 「お斎」の什器は、常には大切に保管され、お講の時のみ出番を待っています。外箱には、昭和6年に新調したと、ある箱書きには女人講員の野畑ふみ、坂田れい、新美なかさんが寄進人と認められてあります。他の箱書きにも二十二日講から寄付されたなどなどと(一部のみを掲載)。これらの輪島塗の膳椀は70余年、私の生まれた以前から折々に手直しされつつ充当されてきました。

 毎年欠かすことなくお講の会食用に配置されます。黒塗りが主ですが、本年にあっては『朱塗り』の器をもってこれに当たります。




報恩講の差定

 初・21日(土)
 中・22日(日)
 結・23日(月・祝)


称念寺新本堂計画 経過報告

 築200余年を経た寺の本堂は、長い間ご門徒の方々の信仰によって支えられてきました。過去の地震・台風の被害には、その都度補修がなされて来ましたが、近年には特に耐震強度の不足が露呈しその対策が課題となっていました。

 今年6月には、新本堂建設委員会を新たに発足させていただきました。各地区のご門徒さんより委託して、21名が委員会にて協議し、本堂の今後について話し合いを重ねてきました。

 月に1度の委員会では、建設委員の皆さんと共に、@社寺建築会社による耐震診断レポート、A新築、改築案の価格及び耐久性、B木造とRC(鉄筋コンクリート)造の比較・利点等を主題として討議いたしました。

 9月の委員会では、木造・新築を計画目標として進めることを確認、全員の賛同をいただきました。先月は委員さんと共に、海部郡の新築木造本堂を視察し、G寺・住職さんより建立に至る経過の苦労話を熱く聞かせていただきました。

 リーマンショックよりの大変厳しい経済状況にあって、慎重に称念寺の将来像をも含め、計画内容を協議していただいています。



銀杏

 落ち葉の季節になった、欅、もみじ、桜の葉っぱなど。10月から、約3ヶ月に亘って続く。一挙に落ちてくれればいいと思うのだが徐々にであるから、かえって始末に困る。毎朝、おあさじ参詣者の方々が清掃にご奉仕くださるので大助かり。大層有り難いことです。

 境内に大きな銀杏の木が2本あった。本堂の屋根は高さ12m、それをはるかに超える樹であった。余りに伸び拡がったので、台風時に心配していた。昨年の夏、ばっさりと伐った。高さを半分とし、枝も全て伐り払った。おかげで昨年、今年はイチョウの落ち葉が、ほとんど無いに等しくなった。またギンナンの結実も見かけない。例年10、11月の2ヶ月は、連日皮むき・洗いの作業(住職の役務、臭うので応援は頼みがたい)。

 先日、居酒屋でギンナンを注文した。お金を払って食することの経験がなかったこともあって、思いのほか美味かった。

 報恩講の定番としてきた『銀杏ご飯』。今年も手配して準備完了。



 ストーブを 置く位置かえし 冬支度    渋沢渋亭









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2009年11月号

お講の舞台裏
発行所
真宗大谷派 称念寺
発行人 住職 伊勢徳