共に「池鯉鮒」歌川広重画
下の松並木は、現在までその姿を留めています。



名鉄知立駅







山号紋(本尊土香炉)





山号・寺紋(内陣経箱)













本堂正面




日曜おあさじ(06年7月)
現在の所在地

 称念寺は愛知県知立市の新地町、名鉄本線知立駅の北東、徒歩3分に位置します。関が原合戦の翌年(1601年)に東海道の宿駅となり、馬市場の農村であった知立の町は、東海道五十三次の宿場町として栄え、道中では第39の宿場でした。当時の地名は「池鯉鮒(ちりふ)」という字が使われていました。

 知立の中町はその名からしてまさに当時の中心地であり、そこに寺がありました。ときに1705年(宝永2年)、本町桶屋喜右衛門裏家から失火し、池鯉鮒宿など計81軒を消失した大火によって寺にまで火がおよび、本尊や宝物なども多く焼失してしまいました。その復興にあたって、新しい境内地をその南はずれに求めました。

 1716年(享保元年)に、そこにささやかなお堂を建てました。約50年後に念願の本堂が建立され、その頃から寺が移転した場所を「新地」という町名で呼び始めました。寺の界隈に人家が新たに形成されていく「寺内町」を予測したもので、後に知立市の中心地へと発展していきました。再建された7間4面の本堂は、築後より現在までの約200年を経過しています。

 知立の町も鉄道が通り、知立駅が門前通りの往還の南に設立されて以来、昭和40年ごろまでは旧碧海の中心地として隆盛を極めたが、駅が東に移設された頃からは徐々にさびれていきました。現在では近隣の豊田、安城、刈谷市などが大きく発展していくなかにあって、当市だけが取り残されたという感もあります。

寺名 称念寺

 古来僧侶は俗世間を離れたところで修行をし、世間の関心事を避けることを意識して出家した僧侶達の道場(寺)は町と離れたところにありました。また山岳仏教などもありました。このような状況下で、寺の名称に「山号」も付けられています。拙寺は「一向山」といいます。山号の多くは地名であったり、その地の成り立ち、いわれをもとにした表現を用いたりすることが多いのですが、一向山の一向とは、阿弥陀仏に帰依すること、これ一つが肝要ということ。また真宗の別称は一向宗であり、その体を表す要語を拙寺の山号にしていることについては、いささか恐れ多いように思います。

 「一向専修・称名念仏」といわれるように、「寺号」についても同様に感じます。寺の願う有様は、阿弥陀の願意からの呼び声は、私達に生活のなかで念仏を称し、精一杯生きることに尽くすことでしょう。称念とは末寺の名称でなく、宗派の山号・寺号であるかのような名称だからです。苦悩する庶民を対象に掲げてきた教義を持つ真宗の寺院は、現に高地の山々ではなく、多くが平地の町の中に位置します。しかし「山号」は名称の中で肩書きのように使用しています。

 現在浄土真宗には10派あるなか、東西両本願寺が良く知られていますが、お東さんは正しくは「真宗大谷派」です。本願寺教団が一般社会で認知されたのは、第8代の蓮如上人(1415〜1499)からのことです。称念寺が知立の地で開山したのはそれ以前の1320年頃、初代の開基は「道性(ドウショウ)」とあります。したがって称念寺の初期にあっては細々とした庵程度のものであったと想像できます。この地に流れてきた道性は、傑出した僧であったかもしれないし、あるいは変人扱いされた僧かもしれません。なぜなら当時で言えば、浄土真宗は新興宗教です。世間の雑言罵倒のなかで簡単に信徒が多く加入したとは考えられません。

 いづれにせよ「念仏成仏これ真宗」、このことを訴えて布教活動に苦労されたことは間違いないでしょう。ここ三河地方で開宗後、真宗初期からの寺としての称念寺は、歴史的には数少ない寺院の一つです。このことが山号・寺号の名称に関連し、大谷派に所属した後も特別に許可されたと推測されます。本願寺が東西に分立したのは1602年です。この頃より宗派は組織を拡大し、大教団を形成していきました。称念寺が真宗大谷派の末寺として所属した時期は定かではありません。

本堂について

 約200年前に建てられた称念寺の本堂には、寺院建築特有の支綸、蛙股に「雅楽」にちなんで彫り物で装飾されています。支綸には雅楽の楽曲名が、蛙股にも雅楽の楽器が刻まれています。宮大工たちによる建築では彫り物、彫刻をも競い合い、龍舞楽のものがあり、一部「襖」にも及ぶ。この本堂における最大行事を「報恩講(11月21〜23日)という。この法要には雅楽の調べを聴くことができます。12名の信徒で構成された「雅了会」が担当しています。発足はさだかではありませんが、2代目であったり、叔父の誘いで参加したりと、連綿と引き継がれています。美妙な音色は、法要儀式を否応なく、格調高く盛り上げます。

『雅了会』の新団員を募集しています。雅楽に興味のある方は住職までご連絡をください。







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